本人調査と学校調査から見えた不登校の原因


2016年度で50回を迎える「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」。

1966年度の不登校に関する調査が始まって以来、様々な項目が追加されています。

毎年秋ごろにデータが発表されますが、一つ気がかりなことが挙げられます。

それは、不登校経験者が「調査目的で不登校の理由を聞かれたことは一度もない」と言っていることです。

調査されていないのに、数字が公表されている・・・これは危険なかおりがします。

果たしてどのように調査されているのか、そして調査結果は不登校経験者の認識と合致しているのかをご紹介します。

不登校の原因は不登校経験者には聞かれない?

実は「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」は学校が回答したものなのです。

不登校を経験した本人の意見が反映されないまま調査が実施され、不登校の原因がデータとして公に発表されることに、皆さんは違和感を感じませんか?

このようなデータからは不登校の原因を、学校がそのように判断しただけで、本人がどう感じているかは一致しない恐れがあります。

そして学校側の立場なら、できれば「教師との関係」を不登校の原因にはしたくありませんよね。

不登校の原因…真実は複数ある

学校側はどのような回答をしたのでしょうか。

また不登校経験者は、ご自身が不登校になった原因をどのように考えているのでしょうか。

本人調査は2006年時点での不登校者を対象にしていますが、この調査で明らかになったことは本人調査の結果の方が複数の「不登校理由」を選んでいることです。

不登校の原因の選択項目で、本人調査では一人あたり2.8項目ですが、学校調査では一人あたり1.2項目選択されています。

つまり、学校は不登校の原因を見落としている可能性があるのです。

本人の目線では不登校には様々な要因や原因があると考えていますが、学校側は複合的に捉えていないことが多いのです。

「先生との関係」を選んだ生徒は25%以上

不登校の原因には選択肢が14項目あり、その中には「親との関係」「友人との関係」「先生との関係」が含まれています。

本人調査と学校調査共に、人間関係の中で最も数値が高いのは友人との関係です。この点は想像できると思います。

しかし、注目すべきは本人調査と学校調査のギャップです。「親」「友人」「先生」それぞれの関係でのギャップが次の通りです。

親との関係
学校調査 9.2%
本人調査 14.2%

 

友人との関係
学校調査 19.7%
本人調査 52.9%

 

先生との関係
学校調査 1.6%
本人調査 26.2%

表を見ると、親との関係を原因と考えるのは、学校調査と本人調査でおよそ1.5倍の開きがあります。友人との関係を原因と考えるのは、3.2倍の開きがあります。

不登校経験者が複数回答していることを考えると、ここまでは容易に考えることができます。

問題なのが先生との関係です。学校調査では教師が原因であるとの回答は1.6%にとどまっています。しかし、本人調査では26.2%にも。

学校と本人の間には16.3倍のギャップがあります。

不登校は先生の責任と言いたいわけではありません。しかし、ポイント数の低さから学校側が認識できてないことは問題です。

不登校経験者本人と学校が全く異なる不登校の原因を思い描いている限りは、不登校児童が減ることはありません。

「普通」の保護者にこそ目を向けてみましょう

先生も悩みが多いのは重々理解します。部活の顧問を担当している場合、休日出勤は当たり前ですよね。

特にモンスターペアレントは深刻な問題です。しかし、大多数のご両親はどうでしょうか?

モンスターペアレントは「そのような人たち」で済まされますが、それ以外の大勢の親御さんは「普通」であるはずです。

モンスターペアレントはクレームばかりですが、普通の保護者達は先生に諦め、最初からコミュニケーションを断っているとも考えられます。

モンスターペアレントや残業、休日出勤に苦労する現場の先生たちを「保護者の視点」から見守り、「先生」に同情し、遠慮し、諦めています。

その結果が、学校と保護者、不登校経験者本人の認識のギャップです。大きな壁が、不登校原因のずれを招いているのです。

まとめ

不登校の原因を理解せず、保護者からも諦められている。

世間から諦められてさえいる「先生」という存在について、先生自身がまずは自覚することが不登校改善への一歩になるのではないかと思います。

不登校の原因を再度認識するためには、子どもの声を拾い上げることが大切です。

子供の声に耳を傾けることに関しては、学校だけでなく、行政、民間の教育機関、そして私たち大人全員に課せられている課題でもあります。